interview

各々の生き方に宿る、リクルートのDNA

「30歳までに経営者に」という野望を実現した若きCEOが描くヴィジョン

麻生 要一

株式会社リクルートホールディングス

Media Technology Lab. 室長

株式会社ニジボックス 代表取締役社長 兼 CEO

Profile

麻生 要一(あそう よういち)
2006年新卒入社。大学時代に無人島旅行サークルの立ち上げ、地元の活性化を目的としたイベントの開催など、さまざまな取り組みを行う。入社1~2年目は独立起業家向け媒体「アントレ」の広告営業を担当し、入社2年目には、社内新規事業提案制度「NewRING」で準グランプリを獲得。2010年に株式会社ニジボックスを設立し、2013年よりCEOに。リクルートの新規事業を推進するMedia Technology Lab.の室長も兼務している。
※2016年3月時点です。

リクルートのアイデンティティとも言える新規事業開発に特化したMedia Technology Lab.の室長を務めるほか、自らが起案した事業から生まれたリクルートの子会社「ニジボックス」の代表取締役社長兼CEOとして、160名超の従業員を抱える経営者としての側面も併せ持つ麻生要一。「30歳までに経営者になる」という野望を抱いてリクルートに入社し、さまざまな経験を経てそれを実現させた彼はいま、自らの将来、そして、リクルートの未来に対して、どのようなヴィジョンを思い描いているのだろうか?

将来なりたい姿を考えても、
その時点での想像の範疇でしかないんですよね。
自分にとっては、その想像や予想を
いかに超えられるかという方が大事なんです。

—麻生さんは2006年に新卒でリクルートに入社されていますが、それまではどんな学生生活を送っていたのですか?

麻生:大学時代はいろいろなことをしていましたね。まだ世界にないサークルを作ろうと思い、毎年夏になると無人島に行く「無人島サークル」を立ち上げたり、僕の地元の街を盛り上げようと、「Summer Festival」というイベントを企画したりしていました。また、愛知万博のときに企業に出資してもらい、ハンバーガー屋さんを出店したのですが、これが自分にとって人生初めてのビジネスでしたね。学生が起業した会社として世界で初めて万博会場に飲食店を開業したということで、地元のラジオ局に取材をしてもらうという経験もしました。

—かなりいろんな活動をされていたんですね。これらに共通するものというのは何かあったのですか?

麻生:かなりバラバラですよね(笑)。強いて共通点を挙げるなら、「おもしろそうなことをする」でしょうか。それはいまの自分の働き方やキャリアに対する考え方にも通じるところがあって、人生の夢や目標に日付をつけていく考え方ってあるじゃないですか。僕自身、40歳、50歳の時点でなっていたい姿は考えているのですが、それはあくまでもその時点での想像の範疇でしかないんですよね。自分にとっては、その想像や予想をいかに超えられるかという方が大事で、想像できない自分と出会うために、いままで知らなかったことや経験したことのないことを積極的にしようと思っていて。それによってセレンディピティみたいなものが最大化し、いまとは違う自分になれるかもしれないという思いがあるんです。

—学生時代は、将来の仕事についてどのように考えていましたか?

麻生:バンド活動をしていたこともあり、20歳までの夢は紅白歌合戦に出ることでした(笑)。でも、そのころにビジネスコンテストに出る機会があり、自分と同じくらいの年齢の大学生がスーツを着て、パソコンを使ってプレゼンテーションをしていて。そこにベンチャーキャピタルの人たちが投資をするという世界を目の当たりにして、純粋にかっこいいと感じたのが、経営者になりたいと考えるようになったきっかけです。そこから180度方向転換をして、「30歳までに経営者になる」という目標に向けていま何をすればいいのかを考えたうえで、企業のインターンに行ったり、就活に取り組むようになりました。

「リクルートに入ったら失敗することもあるかもしれないけど、
逆に僕が想像できないほどすごい人になっているかもしれない」
という言葉が入社の決め手になりました。

—リクルートへの就職というのは、どのくらいの時期から考えていたのですか?

麻生:実は、就活を始める前まで、リクルートという企業の名前を知らなかったんです。もちろん、「ホットペッパー」や「リクナビ」のことは知っていましたが、それらのサービスとリクルートという会社が結びついていなかったんですね。そんな知識しかなかったのですが、社員の方とお会いしていろいろ話したことがきっかけでリクルートに入りたいと思うようになりました。その理由は3つあって、まずは、多くの経営者を輩出している会社に入れば、経営の力が身につくんじゃないかということ。2つ目は、出会ったリクルートの社員の人たちがみんなとても楽しそうに見えたことで、この会社で働く人生は楽しそうだと思えたんです。

—それは1つ目の理由よりも大切なことかもしれないですね。

麻生:そうなんです。さらに、決め手になった3つ目の理由というのが、リクルートのOBで、当時キャリアカウンセラーとして相談に乗ってもらっていた方の言葉でした。その方に言われたのは、「リクルート以外の会社に入って活躍している麻生くんの姿は想像できる。でも、リクルートに入ったら、失敗をしてしまうこともあるかもしれないけど、逆に僕が想像できないほどすごい人になっているかもしれない」ということでした。リクルートはそういう可能性を秘めている会社だということを聞き、ここなら想像できない自分と出会えるんじゃないかと思ったんです。

—リクルートに入ってからは、どんな仕事をするようになったのですか?

麻生:入社してからは、「アントレ」という独立起業家向けの媒体で広告営業をすることになりました。配属面談で、勤務地は首都圏、配属はHRカンパニー(現リクルートキャリア)、職種は営業がいいという希望を伝えたんですね。ある意味希望通りになったのですが、てっきり「リクナビ」の仕事ができるのかと思っていたら、「アントレ」というあまり聞いたことがなかった媒体を担当することになり、自分にとっては衝撃的でした(笑)。右も左もわからないまま、営業電話をかけるところから始まったのですが、いくら営業をしてもまったく売れないという時代が約1年半続き、相当厳しいスタートになりました。

人と人とのつながりや感情によってビジネスは動いている。
それを強く感じられたことが、
自分にとってのターニングポイントになりました。

—その厳しい状況をブレイクスルーするために、どのように動いていったのでしょうか?

麻生:入社して1年半くらい経ったころ、クライアントに大きな提案をする機会があり、そこで渾身のプレゼンができたんです。そのプレゼンは社内からの評価も高く、僕としてもかなり手応えがあったのですが、そのときに提案した先の事業自体がその翌週に撤退することになって、提案も白紙になくなってしまったんですね。これだけ考えに考えて、渾身の提案をしても受注できないことがあるんだと、大きなショックを受けました。

—それは落ち込んでしまいそうな出来事ですね。

麻生:そんな出来事があった翌月、自分が達成すべき売上にどうしても届かず、もう尽くす手はないというところまで追いつめられてしまって。当時最も仲良くしていたお客さんに連絡をして、なんとか発注してもらうために懇願に行ったんです。それが実って広告の発注をいただけたのですが、そのときに、人と人のつながりや感情によって商品が売れたり、ビジネスが動くということを強く感じられたことが、自分にとってのターニングポイントになりました。

—それまではビジネスに対してどんな考えを持っていたのですか?

麻生:経済学部だったこともあり、マーケティングや経営戦略にもとづいたフレームワークを作っていくことこそが、ビジネスだと思っていました。でも結局は、人が人に対して一生懸命に働きかけることによって気持ちが動き、ビジネスが生まれるということがわかったんです。その翌日からは営業やプレゼンの説得力が増して、信じられないくらい受注が取れるようになりました。

—それはまさに大きなターニングポイントでしたね。

麻生:はい。その後は、「NewRING」というリクルートの新規事業提案制度で提案したモバイルサイトの課金モデルビジネスが採用され、当時立ち上がったばかりだったMedia Technology Lab.で順調に事業を成長させていくことができました。そして、その事業をベースに、リクルートの100%子会社を作るという話になり、2010年に株式会社ニジボックスを設立し、2013年からCEOになりました。

—順調にキャリアを伸ばしていらっしゃいますが、壁となる出来事はあったのでしょうか?

麻生:ちょうど僕が社長に就任した2013年ごろは急激に業績が悪化していた時期で、このままだとあと9か月で倒産してしまうという状況でした。そこで2つ目のターニングポイントとも言える出来事があったのですが、会社を設立したときに自分が採用したスタッフたちをリストラする判断をしたんです。そのときに強く心に誓ったのは、これからは常に、絶対に自分が正しいと思う経営判断だけをしよう、ということでした。ビジネスの状況が悪くなったときに責任が取れるかどうかというのは、経営のプロセスすべてにおいて自分が信じた判断をしてこれたかどうかが大きく関わるということを知りましたね。

経営者の魅力は、誰かに言われたことをするのではなく、
自分自身で進むべき方向を決めて、
そこに責任を持って取り組んでいけることだと感じています。

—経営者になりたいという思いでリクルートに入った麻生さんですが、実際に経営者になり、さまざまなことを経験したいま、ご自身の経営に対する意識は何か変わりましたか?

麻生:当時経営者になりたいと思っていた自分は、イチローに憧れてプロ野球選手になりたいと夢見る子どもとあまり変わらなかったんだと思います。ありがたいことに30歳で経営者になるという目標通り、30歳になる5日前に社長になれたのですが、学生時代に漠然とイメージしていた経営者の姿が、いまは具体性を持って描けるようになりました。経営者の魅力は、誰かに言われたことをするのではなく、自分自身で進むべき方向を決めて、そこに責任を持って取り組んでいけること、ありたい姿を自分で決められるということだと感じています。

—麻生さんには、新規事業開発を手がけるMedia Technology Lab.の室長としての側面もありますが、リクルートの新規事業はどのような指針のもとに展開されているのでしょうか?

麻生:リクルートの新規事業開発は、リクルートという会社のヴィジョンがベースになっているというよりは、働いている一人ひとりの社員が成し遂げたい世界や、実現したいことからスタートしています。僕たちは「社内起業家」という呼び方をしていて、それを10段階くらいに細分化して考えているんですね。その最初の段階は「WILL」、つまり世界の何を変えたいのかという意志なんです。それを形にしていくためにカスタマーを定義して、インサイトを探り、ソリューションを作っていくという具合に段階を上げて、精度を高めていくということをしています。

—リクルートの社内起業家と言われる人たちには、どんな特徴があると思いますか?

麻生:いま「Recruit Ventures」では年間500件近く、つまり500人分の提案が上がってきているんです。一人ひとりがさまざまな業界から課題を見つけ、「自分が解決しないといけない」という強い当事者意識を持って臨んでいることに驚かされますね。それは、単に「儲かるからやる」という意識とは違い、「その課題を見てしまったからには解決しないといけない」と考える人が多く、言ってみれば、社会に対して究極的におせっかいなんです(笑)。そうした人たちに囲まれていることは、自分としても非常に心地良いですね。

リクルートは本気で社会を変えていこうとしている会社。
世の中を変えていきたいならば、
リクルートくらいの規模で事業をすることが必要だと思います。

—自らベンチャー企業を立ち上げて新規事業を行うという選択肢もあるかと思いますが、リクルートの中で新規事業を立ち上げることの意義はどんなところにあると思いますか?

麻生:仲が良い仲間たちと好きなように働きたいと考えるのであれば、自分たちで事業を起こし、それを運営していくのでもいいと思うんですね。ただ、学生が集って起業するような規模では、社会に対してできることには限界があると思います。一方で、リクルートというのは本気で社会を変えていこうとしている会社です。もし経営者になり、世の中を本気で変えていきたいと考えるのであれば、リクルートくらいの規模で事業をするということが必要なんじゃないかと思います。

—もし仮に、学生時代の自分に対して、いまの麻生さんがリクルートという会社の説明をするとしたら、どんなことを話すと思いますか?

麻生:経営者を目指して就活をするというときに、僕自身がそうだったように、多くの人たちは最初の選択肢としてコンサルティング会社などを視野に入れると思うんですね。そんな当時の自分にリクルートという会社の話をするとしたら、「コンサルタントとしても優秀な人間がたくさん集まり、さらに自分たちで事業を立ち上げ、モノやサービスを作ることができる会社だ」と伝えると思います。そして、「コンサルをすることと、自分たちで事業をすること、どちらがおもしろいと思う?」と言うでしょうね。

—なるほど。今後、麻生さんがリクルートで実現したいと思っている展望があれば教えていただけますでしょうか。

麻生:リクルートは、「未来の社会を作る会社」だと思っていて、特に自分がいるMedia Technology Lab.は、それを推進していくことが役割です。そこで僕がしなくてはいけないのは、次の社会をどうデザインするのかということを考え、それをビジネスとしてインフラ化していくこと。日本には、挙げればきりがないくらいたくさんの課題があります。リクルートは、新規事業という切り口からそれらの課題を解決し、社会を変えていける会社なので、それを実現していきたいですね。

—新規事業を次々と立ち上げていく勢いを持ったリクルートだからこそできることかもしれませんね。

麻生:そうですね。この会社がすごいと感じるのは、これほどの規模にも関わらず、いまだにものすごいスピードで変化と成長を続けているということです。3年前のリクルートと、いまのリクルートはまったく別の会社だと感じるし、おそらく3年後も大きく変わっているはずです。それぞれの事業が影響を与え合いながらダイナミックに動いているから、会社がどう変わっていくのか想像できないんです。それは、ひとつの事業だけで完結している会社で経営をするよりもはるかにおもしろいことですし、そういう環境にいることで、僕自身も予想がつかない自分になれる可能性が高まると感じています。

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