interview

各々の生き方に宿る、リクルートのDNA

メディアアートの延長線上で「パン田一郎」LINE公式アカウントを生んだ男

板澤 一樹

株式会社リクルートジョブズ

IT戦略室

デジタルマーケティング部 部長

Profile

板澤 一樹(いたざわ かずき)
2007年新卒入社。大学ではヒューマンインターフェースの研究をする傍ら、東京芸大で非常勤助手なども務める。大学在学中より個人事業主として、Webサイト・サービス構築業務を行っていたが、よりダイナミックに社会と関わっていくためにリクルートに就職。ITマーケティングの分野で経験を積み、2015年にはIT戦略室 デジタルマーケティング部の部長に就任。
※2016年3月時点です。

大学時代から個人事業主として、Webサイトやサービスの構築を手がけた後、リクルートで、IT・データ領域のスペシャリストとして活躍を続けてきた板澤一樹。2015年に株式会社リクルートジョブズ デジタルマーケティング部 部長に就任。彼が発案した1to1コミュニケーションを活用したデジタルマーケティング施策「パン田一郎」LINE公式アカウントは、1700万人(2016年2月10日時点)を超えるユーザーを獲得する大ヒット作となった。高校時代にメディアアートに影響を受けて以来、人とテクノロジーの接点を模索し続けてきた板澤は、リクルートという環境を最大限に活用しながら、ITの力で人の可能性を拡げるというミッションに日々向き合っている。

個人で小さなことを続けるのではなく、
より大きな仕事をするためにも
就職した方がいいと感じたんです。

—リクルートに入社する前は、どんなことに興味を持っていましたか?

板澤:高校時代から、人とテクノロジーの接触する部分に興味がありました。ダムタイプというアーティスト集団がいて、ダンス、テクノロジー、デザイン、音楽などさまざまな分野の専門家が集まり、人とテクノロジーの力をミックスした先進的な舞台パフォーマンスをしていたのですが、それに影響を受けたのが大きいですね。それからアートとプログラミングなどの数理的な要素を融合させたメディアアートに興味を持つようになって、その流れで大学時代はヒューマンインターフェースの研究をしていました。

—アーティストになろうとは考えなかったのですか?

板澤:思い浮かべたこともありますが、その方面に才能があるわけでなかったので、早々に諦めました。大学時代には、ヒューマンインターフェースの文脈で、人の感性に訴えかけるようなガジェットを作ったりしていたのですが、こうしたものは一般的なユーザーに使われる機会があまりないので、概念的な思考が中心になってしまうんですね。その当時僕は、知人のつてで芸術関係のWebサイトのデザインやコーディングをしていたのですが、Webの場合はすぐにユーザーに使っていただくことができます。そうした部分に魅力を感じるようになり、Webの仕事をするのもいいかなと考えるようになりました。

—大学卒業後、企業に就職をせず、Web制作の仕事を継続するという選択肢もありますよね。その道を選ばなかった理由は?

板澤:たしかに、Web制作の依頼は徐々に増えていました。大学院に進学してからは1年間休学し、仕事に専念していた時期もあり、そこそこうまくいっていました。ただ、大学時代の同期の中には、就職して大きな仕事をしている人たちも出てくるんですよね。それを見ているうちに、個人の責任の範囲で小さなことを続けるのではなく、より大きな仕事をするために就職した方がいいと感じ、就活をするようになりました。それまでの経験を生かせる就職先を探していくなかで、ボトムアップの文化があり、自分がやりたいと思ったことをやらせてもらえそうだと感じたのが、リクルートでした。

早期から仕事を任せてくれるという
リクルートの文化は自分にフィットしていましたね。

—板澤さんが入社した2007年当時、リクルートのITへの取り組みはどのような段階にあったのですか?

板澤:いまでこそ、「IT企業」というイメージを持ってリクルートに入ってくる人は多くなりましたが、当時はまだそこまでITに力を入れていない状況で、それが逆にオイシイと思っていました(笑)。とはいえ、僕が入社した時点でも、IT関連の売上は他社と比べるとかなり大きな規模だったんです。それに対して人材が足りていなかったので、いろいろ任せてもらえるんじゃないかという思いはありました。

—実際にその目論見は正しかったようですね。

板澤:そうですね。入社後は、インターネットマーケティング局に配属され、各事業部のインターネット関連のプロジェクトに関わるようになりましたが、予想通り、少人数の体制ながら予算規模の大きい仕事に関わることができました。ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)をデザインするセクションで働くことも考えたのですが、せっかく会社に入ったのだから、ここでしか経験できないことをしようと思い、あまり知識がなかった広告領域の仕事を希望し、広告のバイイングや効果測定、リスティング広告などを始め、Webマーケティング全般を担当していました。

—人数が少ない分、大変だったことも多いのではないですか?

板澤:現在のようにしっかりした研修制度もなかったので、入社数日後からITの専門家として各事業部と仕事をする必要があり、すごい環境に入ったなと感じていました。上司からゆっくり教えてもらう機会もほとんどないまま、いきなり現場に放たれた感じでした(笑)。1年目から、社内のWeb制作のプロセスを改善するプロジェクトのリーダーを担当させてもらったのですが、早期から仕事を任せてくれるという会社の文化は自分にフィットしていましたね。

—1年目から責任のあるポジションを与えられるのは自信がつきそうですね。

板澤:実は、最初の1、2年目はなかなかWebマーケティングにおける持論を固めることができず、自信が持てない時期が続いていたんです。その後、自分たちがこれまで行ってきたWebマーケティングのナレッジを整理し、ドキュメントにまとめるというプロジェクトを主導したのですが、それによって自分自身の頭の中も整理され、大きな自信がつきました。

自然言語処理の専門家から、
デザインやUXの知識を持つスタッフまで、
各分野の専門家が集まっているからこそ
実現できることがあります。

—最近手がけたプロジェクトとしては、LINEで「フロム・エー ナビ」のキャラクター「パン田一郎」と会話して、自分の希望条件に合ったアルバイト情報を教えてもらえるLINE公式アカウントが大きな反響を呼びましたね。

板澤:これは、日増しに影響力を強めていたLINEというメディアを使い、求人に関わる施策ができないかということから始まったプロジェクトでした。単にLINEアカウントを作るだけでは物足りないと思っていたころ、LINEのAPIを企業向けに有償で提供する「LINEビジネスコネクト」が発表されて、それを受けてすぐに「LINEビジネスコネクト」を用いた会話型サービスの準備を始め、4ヶ月ほどでリリースをすることができたんです。前例がないサービスだったのでユーザーに受け入れてもらえるか不安でしたが、予想以上に利用していただいています。

—制作するうえではどんなことがハードルになりましたか?

板澤:人の自然言語を処理する環境を作る、ということが最初のハードルでした。さらに、サービスとして運用していくためには、自然な会話として成立させるための会話辞書を整える必要がある。送られてきたメッセージに対する回答が、何かしらのトラブルを引き起こすことがないように慎重に検証を続けました。ほかにも、アクセスを分散させる仕組み作りなどの課題もありましたが、10名くらいのチームでひとつずつ対応していきました。大変な作業でしたが、業界に先駆けて新しいことができるという期待感があったので、チームのモチベーションを維持しながら、短期間で集中して取り組むことができました。

—板澤さんはこのプロジェクトのリーダーだったそうですが、チームを編成するうえで大切にしていることはありますか?

板澤:広い意味でのUXを理解している人をチームに入れるということを大切にしています。「パン田一郎」にしても、特別新しいテクノロジーを使っているわけではないのですが、実際に使っていただくと、普通に会話ができている感覚が持てると思います。これは、自然言語処理のチューニングや会話辞書の作り方によって変わってくる部分で、これらを最適化するためには、広い意味でのUXを理解している必要があります。「パン田一郎」では、そうしたことがわかるスタッフをチームの中核に据え、プロジェクトを推進していきました。

—他社に先駆けて、このような先進的なサービスがリリースできた理由は、どんなところにあるとお考えですか?

板澤:リクルートの強みは、自然言語処理の専門家から、デザインやUXの知識を持つスタッフまで、各分野の専門家がいるということです。そういう環境があるからこそ実現できることがありますし、自分がやりたいと思っていることに対して、最適なチームを作っていけることはとても刺激的ですね。リクルートにいると、いろいろなタイプの人と仕事する経験が積めますし、それは自分にとっても良かったと感じています。

既存事業の変革に向けた
データ活用のインフラ作りという点では、
世界的に見ても先端を走っているのではないかと思います。

—リクルートのデータ解析における取り組みについても教えてください。現在力を入れていらっしゃるそうですね。

板澤:はい。近年、デジタルマーケティング部では、データ解析のチームを強化しています。「タウンワーク」「フロム・エー ナビ」などを扱うリクルートジョブズには、これまでに蓄積された膨大なデータがあるので、これらをマーケティングに活用していく方法もたくさんあるはずです。例えば、リアルタイムにデータを処理し、最適な情報をユーザーに返していくということができれば、アルバイト探しをしている人にとってより最適な求人情報を提示できる精度も高まります。また、通常の人による求人原稿のチェック機能と併せて、自然言語を処理して注意すべき表現を自動抽出するツールを開発しました。今後、原稿品質の向上やコストの最適化に貢献していきたいと考えています。

—分析したデータをすぐに活用していけるところは、リクルートの大きな強みと言えそうですね。

板澤:データを活用して、ビジネスをダイナミックに動かしていきたいというモチベーションがある人にとっては、非常に良い環境ですね。既存の事業を変革していくためのデータ活用のインフラ作りという点では、グローバルレベルでも先端を走っていると言えるのではないかと思います。

—スマートフォンが生活に浸透し、これまで以上に多様なデータが活用できるようになっています。そうした状況で、今後のデジタルコミュニケーションはますます進化していきそうですね。

板澤:現状では、さまざまなサービスを使うなかでストレスに感じることがまだまだあると思うんですね。アルバイトを例にとると、面接やシフトの調整は未だオンライン化されておらず、アルバイト代を手にするまでにも時間がかかっています。これからのライフスタイルを想定したうえで、テクノロジーの力を使って無駄なリードタイムを減らしていきたいという思いがあるんです。その分の時間を自分の興味に費やせるようになれば、生活はより豊かになるはずですよね。これからも、ITの力で人の可能性を拡げるような仕事をしていきたいと思っています。

「パン田一郎」は
日本の人口の約1/15の人たちに使っていただいている。
これほどのスケール感で仕事ができるのは、
リクルートならではの魅力だと感じています。

—現在板澤さんは、デジタルマーケティング部の部長という立場ですが、これから先、リクルートに対してご自身が果たしていくべき役割についてどのようにお考えですか?

板澤:これまでに得てきた経験や、会社としてのナレッジを使い、それぞれの社員の可能性を最大限に引き出し、成長を促せる環境を作りたいんです。これまでの自分のキャリアを振り返ってみても、人材育成に関わる部分に注力してきたところがあるので、今後はマネージャーとしてそのスタンスをより強めていきたいですね。

—入社前に関心を持たれていたメディアアートと接点を持ったプロジェクトを立ち上げたいという思いはお持ちですか?

板澤:そういう意味では、「パン田一郎」は自分としてもいままでの関心や経験を活かせたプロジェクトでした。もともとメディアアートが持つ「これまでに経験したことがない体験を提供する」という側面に魅力を感じていたのですが、このプロジェクトでは、LINEというパーソナルなコミュニケーションツールに自然言語を理解できるキャラクターが割り込んでくるという新しい体験を創り出せたのではないかと感じています。「パン田一郎」にはおよそ1700万人のユーザーがいて、約850万人の方が実際にチャットをしてくれています。つまり、日本の人口の約1/15の人たちが使ってくれているんです。これほどのスケール感で仕事ができるのは、リクルートならではの魅力だと感じています。

—「パン田一郎」は、もともとご自身がやりたいと考えていたことを、リクルートという環境で実現できた良い例だと言えそうですね。

板澤:そうですね。リクルートには、会社の都合よりも、それぞれの社員が何をしたいのかという軸で物事を決めていくカルチャーがあります。自分の経験が活かせるだけでなく、これからやりたいと考えていることが仮に前例がないことだとしても理解を示してくれて、アイデア次第では大きなスケールで実現できるというのは素晴らしいことです。そして、そのアイデア自体を、日々の仕事におけるさまざまなコミュニケーションの中から生み出していける環境というのが、この会社にはあると思います。

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