interview

各々の生き方に宿る、リクルートのDNA

異業種からの転身。0.1%レベルの精度でデータを追い続ける分析スペシャリスト

小林 元

株式会社リクルートライフスタイル

ネットビジネス本部 プロダクトマネジメントユニット

データサイエンスチーム

Profile

小林 元(こばやし げん)
2012年中途入社。大学時代、人工知能とデータ分析の研究をする傍ら、金融データの分析を行う会社を起業。その後、保険会社やコンサルティング会社などでデータ分析の仕事に携わり、2012年にリクルートに入社。「ポンパレ」のメルマガにおける商品掲載順を最適化するプロジェクトで売上を飛躍的に向上させ、新しい価値の創造を行ったイノベーションに対し、毎年1回、全従業員のなかから10〜15名程度が表彰される制度「ARINA」を受賞。大学病院の研究員や社会人ドクターなど社外活動にも力を入れている。
※2016年3月時点です。

小学生のころ、ゲーム「シムシティ」に夢中になったことがきっかけでプログラミング想の魅力に目覚め、大学時代には人工知能やデータ分析の研究で培った技術を活かしてベンチャー企業を興すなど、データ分析の分野でさまざまな経験を積み重ねてきた小林元。2012年にリクルートに入社してからは、「ポンパレ」や「じゃらん」をはじめとしたサービスにおける分析モデルの設計・実装などを手がけ、現在ではリクルートのデータサイエンティストを代表するひとりとなっている。社会人ドクターや学会参加など、社外の活動にも精力的に取り組んでいるデータ分析のスペシャリストは、自らの活動の場として、なぜリクルートという環境を選んだのだろうか?

中学生のころからプログラミングを書いていて、
言ってみれば「元祖アキバ系」みたいな少年でした(笑)。

—小林さんは大学時代に人工知能の研究をされていたそうですね。

小林:はい。もともと僕は、中学生のころからプログラミングを書いていて、言ってみれば「元祖アキバ系」みたいな少年でした(笑)。大学で研究テーマを選ぶころには、情報科学の分野に近いコンピュータサイエンスにも興味を持つようになり、人工知能の研究をすることになりました。高校生のころにオセロの思考ルーチンのプログラムにはまっていたことも影響しているかもしれません。人工知能は夢のある分野ですし、理論と実装の両方が求められていたため、自分にも可能性があるのではないかと考えたんです。

—そもそも中学生のころからプログラミングに興味を持つようになったのはなぜだったのですか?

小林:僕はスーパーファミコン世代なんですが、小学生のころに「シムシティ」という都市開発のシミュレーションゲームに夢中になっていました。このゲームは、アメリカのゲームクリエイターであるウィル・ライトという人が作ったのですが、その背景には、「セル・オートマトン」という計算モデルがあるんですね。さらに調べていくと、この計算モデルによって生命の誕生から淘汰までのプロセスを再現した「ライフゲーム」というシミュレーションゲームがあるようで、プログラミング課題としても用いられていることを知って。こうした歴史を紐解いていくうちに、自分でもプログラミングをしてみたいと考えるようになったんです。

—ゲームがきっかけだったんですね。小林さんは2012年に中途でリクルートに入社されていますが、それまではどんな仕事をしていたのですか?

小林:人工知能やデータ分析関連の研究で培った技術を活かして、大学時代に金融データの分析をする会社を起業しました。その会社を3年半ほど経営した後に、別のスタートアップ企業の取締役を務めたり、フリーランスでデータ分析の仕事をして、それから保険会社でデータ分析部門の立ち上げを行いました。そこからは金融業界でデータ分析の仕事を続けてきたのですが、やがて、統計学的なデータ分析の手法のみならず、事業側の視点から何を分析するべきなのかを考えていくことが大切だと考え、コンサルティング会社で経験を積み、その後リクルートに入社することになりました。

データ分析に対する理解はありながら、
分析者の数が少なく、余白が多いと感じたからこそ、
自分の価値を発揮できるんじゃないかと考えたんです。

—コンサルティング会社からリクルートに転職しようと思ったのはなぜなのでしょうか?

小林:これまでずっと「何をしたいか」ではなく、「何をするべきか」という軸で仕事をしてきたんですね。コンサルティング会社に行くときも、何を分析するかを考えるためには、コンサルティング会社に行くべきだという考え方で決めていました。それに対して、リクルートに入るタイミングでは、自分が「何をしたいか」を優先して次の仕事を考えてみようという思いがあったんです。そんなときに、大学院時代の知人で、リクルートでデータ分析をしている方の記事をたまたま見て。その記事で職場風景の写真に写っていた本棚をよく見ると、データ分析関連の本が結構並んでいたんです(笑)。

—本のラインナップを見て、働く価値がありそうだなと判断されたんですね。

小林:そうですね。事業会社が募集するデータ分析の仕事というのもさまざまで、いざ入ってみたら自分が想像していた仕事ができないということも少なくないということを、よくデータ分析者仲間と話したりもしていました。ただ、その本棚の写真を見て、リクルートはしっかりデータ分析に取り組んでいるんだとわかったことが、自分にとっては大きかったですね。

—リクルートのデータ分析は、小林さんが入られた当時はどんな段階にありましたか?

小林:競合企業に比べてスタートが遅かったこともあり、僕が入った当時はまだこれからというところがありましたね。ただ、そもそも僕がリクルートに入社を決めた理由のひとつとして、さまざまな分野のサービスを持っているから、データ分析によってできることの幅が広いという点が挙げられます。データ分析に対する理解はありながら、分析者の数が少なく、余白が多いと感じたからこそ、自分の価値を発揮できるんじゃないかと考えたんです。それまでの自分のキャリアを通して、金融会社の法人営業部など、それまでデータ分析者がいなかった場所に入っていくことで、自分の価値を提供できるということが経験的にわかっていたというのもありましたね。

保険業界というのは、
常に0.1%レベルで精度を高めていくことが求められる世界。
そのスタンスをIT分野にも適用することで、
価値を生み出すことができました。

—リクルートに入社してからは、どんなプロジェクトに関わるようになったのですか?

小林:クーポンサイト「ポンパレ」のメルマガにおける新商品のお知らせを最適化するプロジェクトに関わりました。掲載順位と売上の関係を商品ごとに予測し、合計の粗利額が最大になる組み合わせを数理計画法で最適化するアルゴリズムの設計と実装を行って、メルマガ経由の売上を約30%上げることができました。といっても、特別な手法を用いたのではなく、ほかの分野でも普通に使われている教科書的な方法を使ったんです。もともと僕が身を置いていた保険業界では、0.1%レベルで精度を高めていくことが求められることもありました。そのスタンスをIT分野にも適用し、ひたすら精度を追求していくことで価値を生み出すことができ、このプロジェクトで社内表彰制度の「ARINA」を受賞することもできました。入社後数か月というのは非常に大事な時期で、ここでしっかりバリューを作らなければいけないという意識が強かったので、寝る間も惜しんで取り組んでいましたね。

—前職での経験を活かしたんですね。この会社ならではだと感じる部分はどんなところにありますか?

小林:リクルートには、若手や新人に何でも任せてくれる文化があり、それはとても刺激的なことです。また、当事者意識を持って主体的に取り組む人が多く、純粋に全員が達成すべき目標に向かって一丸となっています。部署ごとに割り当てられた仕事があり、それを遂行していくという感じではなく、部署間の壁が低く、業務の境界が曖昧なことが、良い環境を作っているのだと思います。

—データ分析者として、リクルートだからこそ経験できることは何かありますか?

小林:データ分析者として、エンジニアばかりが集まる専門組織に入るという選択肢ももちろんあるわけですが、そこでの自分というのはどうしてもワンオブゼムになってしまい、ほかの人にも同じことができるという状況に置かれるという考えがありました。一方で、リクルートの場合は、事業側のプロデューサーからITシステムの担当者まで、さまざまな職種の人間が集まったチームのなかでコミュニケーションを取りながら、データ分析者として手を動かし、価値を発揮できます。事業と非常に近い距離でデータ分析ができるからこそ得られる経験や、感じられるおもしろさというものがあります。

—なるほど。具体的にはどんなおもしろさがあるのでしょうか?

小林:データ分析自体を売りにしている会社と、実際にサービスや商品を持っている会社では、同じデータ分析をしていても、求められるものは大きく違います。当然、分析を事業改善に活用しているリクルートは、成果に対して非常に厳しいわけですが、持っている媒体が多岐にわたり、それぞれの規模も大きいからこそ、さまざまなことができる余地がありますし、売上を1%上げるための改善に取り組むことが、会社の成長に大きな影響を与えることになるのでやりがいがあります。プレッシャーもありますが、さまざまな種類と幅のモデリングにチャレンジできるということは、データ分析者としての醍醐味でもあると感じています。

データ分析というのは、
仮に20%の労力で80%の成果を出すことができたとしても、
80%の成果を90%にするまでには、
大きな労力と時間がかかるものです。

—データ分析者として、小林さんが大切にしていることを教えてください。

小林:いま僕がいるリクルートは、持っている媒体が多いがゆえに、まだデータ分析がしっかりできていないところに手を入れ、成果を上げていくということが求められています。ただ、データ分析というのは、仮に20%の労力で80%の成果を出すことができたとしても、80%の成果を90%にするまでには、大きな労力と時間がかかるものです。経営的な観点から考えるなら、まずは20%の労力をかけて80%の成果を出すという取り組みを数多く行っていく方が良いのですが、一方で分析者の立場で考えると、80%を90%にしていく努力を怠ってしまうと、スペシャリストとしての幅が広がりません。その辺のバランスは大切にしたいですし、自分にとっての課題でもあります。

—積極的に学会に参加されるなど、社外での活動もされていらっしゃいますが、これらにも分析者としての幅を広げるという意識があるのですか?

小林:そうですね。いま僕は、大学院の学生をしたり、大学病院で研究をしたりしているのですが、これらも分析者としての経験値を広げたいという思いがベースにあります。データ分析というのは、大きくわけると、普遍的な前提から結論を導き出す演繹的なモデリングと、個々のデータから、ひとつの法則やパターンを見つける帰納的なモデリングにとらえることができます。会社でしているWebのデータ分析というのは主に後者の場合が多いですが、一方で、いま個人で取り組んでいる医療分野のデータ分析では前者の場合が多く、自分としてはいろいろなタイプのデータ分析を経験したいという思いがあります。また海外では、医療分野の研究プロジェクトに社会学者や計算機科学者などが参加する場合を見受けることもありますが、日本の医療分野においては、複数分野のスペシャリストがコラボレートするようなデータ分析の取り組みがまだまだ少ないので、何かできないかと考えています。

—そうした社外の活動について、会社はどのように見ているのですか?

小林:業務の足を引っ張らなければ、基本的には自由というスタンスなので、普通の企業ではNGと言われるようなこともできているのだと思います。もちろん、時間的な調整などは必要になりますが、特にスペシャリストとしてキャリアを積み上げていくのであれば、研究というのも非常に大切なものだと思いますし、そこで得た知識や手法は、会社で分析の仕事をする時にも活かせることが多いので、必ず相乗効果はあるはずだと信じて取り組んでいます。事業会社にいると、数字に表れにくい研究というのはなかなか評価されにくいものなのですが、リクルートのデータ分析というものを中長期的に考えたときに、それぞれのボトムアップでの取り組みも非常に大切になってくると考えています。

今後データ分析チームはさらに拡大していくはずですし、
これまで分析が及んでいなかったところにも
どんどん入っていくことになると思います。

—「ビッグデータ」という言葉もよく耳にするようになり、データ分析というものがだいぶ身近な存在になりました。その中で、今後のデータ分析はどこに向かい、社会に対してどんな役割を果たしていくとお考えですか?

小林:個人的には、いまがデータ分析ブームのピークで、期待値が高まりすぎているなと感じますね(笑)。でも、10年くらい前からデータ分析を続けている人たちからすると、驚くほど進歩しているわけですよね。これから分析モデルが徐々に定型化、標準化されていくにつれて、さまざまなソフトなどの分析ツールが出てくるはずです。そうなってくると、データ分析者というのは、ロジックを研究してソフト自体を構築する役割の人と、事業側の視点に立ち、それらのツールを適切に使えるスペシャリストにわかれてくるのかなと考えることがあります。そのくらいの段階まで進んで初めて、データ分析が本当の意味で社会のインフラとして活用されるようになった状態だと言えるのだと思います。

—これからデータ分析者に求められる職能も少しずつ変化していく可能性があるということですね。そうした未来に対して、リクルートのデータ分析はどのように進んでいるのでしょうか?

小林:いまお話したような状況になるのは、まだかなり先のことだと思いますし、現状としては、従来のデータ分析者のスキルを持った人材がリクルート社内にはまだまだ必要です。ただ、データ分析用のツールは徐々に増え始めていますし、組織として分析を活用するという観点では、正しい方向に進んでいると感じています。

—今後、小林さんがリクルートでしていきたいと考えていることを教えてください。

小林:これまで以上にデータ分析の価値の幅を広げ、質を高めていけるチームを作っていきたいと考えています。今後データ分析チームはさらに拡大していくはずですし、これまで分析が及んでいなかったところにもどんどん入っていくことになると思います。それによって、内部には加速度的に知識が蓄積されてくるはずなので、今後はそれらをひとつの形にまとめるようなことにも徐々に取り組んでいきたいです。同時に、いま向かい合っている目の前のプロジェクト一つひとつに対して、しっかりと成果を出していければと考えています。

MODE
FILTER
カテゴリ別
職業別
特性別