interview

各々の生き方に宿る、リクルートのDNA

身近な人たちの笑顔を見るために。「学びの領域」のUXデザインを探究する理由

田中 拓也

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ

ネットビジネス本部 ラーニングプラットフォーム推進室

サービスプロデュース部 UXデザイングループ

Profile

田中 拓也(たなか たくや)
2014年中途入社。NHN Japan(現LINE、NHN PlayArt)やGREEなどを経て、学びの領域のデザインに携わるためにリクルートに入社。現在は、「スタディサプリ」を中心に、「ユーザーエクスペリエンス(UX)」「人間中心設計」「ユーザビリティテスト / リサーチ / 分析」「マーケティング」に従事している。人間中心設計専門家、アイデア創発ファシリテーターとして、社外のワークショップなども行う。
※2016年3月時点です。

ユーザーの体験やライフスタイルに基づいたサービスのあり方を考える「ユーザーエクスペリエンス(UX)」の概念に出合って以来、さまざまな企業でUXデザインを追求してきた田中拓也。自分に身近な人たちを幸せにするサービス作りという観点で仕事をしてきた彼は、自分の子どもが将来触れることになる「学びの領域」におけるデザインを追求すべく、リクルートに入社した。幅広い経験によって培われたデザインのスキルや方法論を、リクルートが持つヴィジョンと融合させることで、田中はどのような「体験」を作り出そうとしているのだろうか?

※「スタディサプリ」とは旧「受験サプリ」のことを指します。

2011年の東日本大震災を機に、
「自分の子どもたちに向けてどんな仕事ができるのか」
ということを考えるようになったんです。

—田中さんがUXデザインに興味を持ったきっかけを教えてください。

田中:僕は、NHN Japanという現在ではLINEを運営している会社で7年ほど働いていて、そこで入社5年目くらいまでWebデザインの仕事をしていました。その当時から、韓国にある本社にはUXデザインを専門とする組織があり、日本にも同様のチームを作るということになったんですね。それまで僕は、Webデザインにおける教科書的なセオリーを信じて情報設計をしていたところがあったのですが、実際にユーザーリサーチをしてみると、ユーザーがその通りに行動していないことが多くて。それに衝撃を受け、当時の自分の役職だったWebデザイン室長を降りて、UXデザインに携わるようになりました。

—そこからデザインに対する考え方は大きく変わったのですか?

田中:そうですね。デザインと一口に言っても、グラフィックデザイン、情報デザイン、エモーショナルデザインなどいろいろなものがありますが、それらを一つひとつの手法や領域としてとらえるのではなく、一連の流れとして考えるようになりました。デザイナー側の視点だけで一方通行の情報設計をするのではなく、ユーザーの体験やライフスタイルからサービスを考えるようになり、ひとつ上のレイヤーから物事が見られるようになったと思います。

—NHN Japanで働かれた後は、どんな仕事に就いたのですか?

田中:僕にはふたりの子どもがいるのですが、2011年の東日本大震災を機に、「自分の子どもたちに向けてどんな仕事ができるのか」ということを考えるようになったんです。それからオイシックスという会社で、理念でもある「作った人が自分の子どもに食べさせられる安心安全でおいしい食品」を戦略的にデザインで表現するいう仕事を経験し、その後、GREEに転職し、新規系の案件のUIやUX設計やUXチームの新規立ち上げを行いました。ここでも「子どもに関わるサービスに携わりたい」という思いにブレはなかったですね。

結婚や就職など、
人生に数回しか経験しないライフイベントを
一連の流れのなかで考えていけるのは魅力的です。

—子どもに向けたサービスのデザインやUXを考えていくことは、大人を相手にする場合とだいぶ違うのですか?

田中:そうですね。よく「直感的なユーザーインターフェース」などと言いますが、そもそも大人の直感というのは、いままでの経験の裏づけによって瞬時に予測し行動していることが多いと思います。これは「熟練型直感」と言って、子どもの直感とは全然違うんですね。例えば、画面をタッチしたことによる何かしらの反応に対し、特に小学校低学年の子どもは純粋に受け止め、表情や行動で反応します。それはボタンなのかどうか? 見ただけでは瞬時に予測できないので、その年齢に応じたデザインをする必要があります。そのような点でも、子どもは大人と大きく違います。デジタル端末が普及している時代に生きているいまの子どもたちは、自分が子どもだったころとは体験に対する反応がまったく違うので興味深いですし、そのなかでいかに体験を「学び」につなげていけるのかということを考えるのはとてもおもしろいですね。

—「子どもに関わるサービスに関わりたい」というなかで、リクルートに転職しようと思ったのはなぜだったのでしょうか?

田中:自分の子どもたちが体験できるサービスというものを考えたときに、「学び」の領域に関わる仕事をしたことがないと思い、リクルートが持つ学びの領域のサービスに携わりたいと考えました。動機が完全に自分ごとで申し訳ないのですが(笑)、まず目の前にいるユーザー、つまり自分の子どもたちを幸せにするサービスに関わりたいという思いがあって、その延長に社会があり、みんながいるというイメージを持っているんです。現在は、「スタディサプリ」に関わっていて、自分の子どもたちが大きくなったときに使ってもらうということをイメージしながら仕事に取り組んでいます。

—転職の際には、リクルートが持つ会社の理念や、全体の事業内容について意識されましたか?

田中:そうですね。結婚や就職など人生に数回しか経験しないライフイベントにまつわるサービスというのは一期一会のところがありますが、それらを一連の流れで考えていけるリクルートの事業内容は非常に魅力的だと感じています。それぞれのライフイベントに対して最適なレコメンドをしていくためには、長くその人とつき合うことでライフログを蓄積していくことが大切だと思うんですね。それは、自分が関わっている学びの領域についても同様で、その人が得意な部分、不得意な部分を見極めていく際にはその人のこれまでの経験というものが必要になります。そこから最適なものを提案し、ユーザーエクスペリエンスの全体的なシナリオを設計していきたいと思っています。

リクルートには、カスタマーや社会に対して、
「こうなってほしい」「負があるなら改善したい」
という熱量が大きい社員が、職種に関わらず多いんですよね。

—田中さんが在籍しているチームでは、UXデザインはどのように位置づけられているのですか?

田中:僕が携わっているリクルートマーケティングパートナーズの「スタディサプリ」のチームには、入社当時はUX専門のスタッフがおらず、ゼロベースでスタートしました。そこから現在にいたるまで、UXに対するチーム全体の理解度は日増しに高まっています。もともとリクルートという会社は、カスタマーをインタビューするということを続けてきた会社なんですね。これまでは、それらの調査をユーザビリティという文脈で必ずしもしていたわけではありませんでしたが、ヒアリングの機会自体は多かったので、要はそこにどうやってUXのエッセンスを取り入れていくかなんです。BtoCのビジネスであるサプリシリーズにおいては、カスタマーのインタビューや座談会を行ったり、高校の現場に行ってワークショップをしたりしているのですが、今後はカスタマーといっしょにサービスを作り上げることも可能だと考えています。

—UXデザインにおける具体的なリサーチ方法について教えてください。

田中:リクルートには、僕が設計に関わった「UXリサーチルーム」というものがあるんです。複数人を対象に行う「フォーカスグループインタビュー」、ひとりのユーザーを深く掘り下げていく「デプスインタビュー」などをここで行っています。まずはアンケートやアクセス解析などによってファクトデータを確認、仮説化していきます。さらにデプスインタビューを通してプロジェクトの課題や改善点をあぶり出し、それをもとに課題に対するアクション方法を立て、必要に応じてユーザーのペルソナを考えるワークショップなどを行いながら、プロトタイプを作ります。プロトタイプができたら、プロジェクトの規模などに応じて、社員間で行う簡易リサーチや実際のカスタマーを相手にしたリサーチなどを行い、スピーディに仮説の検証を繰り返して精度を上げていくという流れです。

—一連のUXデザインの工程の中で、リクルートならではの強みが発揮できるのはどんな部分だとお考えですか?

田中:やはり大きいのは、強い力を持った営業とタッグが組めることだと思います。「スタディサプリ」であれば、学校や先生との強い結びつきがあるので、過去の統計などが比較的簡単に取れますし、実際に学校に行ってインタビューやワークショップをすることも可能です。そのなかでイシューを明確にして、仮説検証ができるということは大きな強みですね。リクルートには、カスタマーや社会に対して、「こうなってほしい」「負があるなら改善したい」という熱量が大きい社員が、職種に関わらず多いんですよね。サプリシリーズに関わるスタッフには、学びに対して興味を持っている人しかいなくて、自分たちの仕事が社会貢献に直結しているとみんなが考えているんです。

これからはデザイナーが
どれだけサービスの上位概念に入り込めるかということも
重要になると思います。

—田中さんにとって、リクルートでUXデザインをすることの魅力や醍醐味は何ですか?

田中:リクルートは、もともと商品を売り出すことが非常に得意な会社です。ひとつのヴィジョンを事業化し、カスタマーに対価をいただくためのパッケージや価値を作り出す力に長けていて、そこにUXやデザインのエッセンスを加えていけるということが、この会社で働くことのおもしろさだと思いますね。事業成長のためのノウハウを持っているスペシャリストたちといっしょに、企業とカスタマーがお互いに幸せになれる接点を探しながら、生活にとってなくてはならないサービスを考えていけるというのはリクルートならではの特徴です。僕の場合は、このサービスに携わりたいという目的を持って飛び込んだところがありますが、「こうあるべきだ」「こうしたい」というヴィジョンを持っている人は、この会社でどんどんそれを実現していけばいいと思うし、それができる環境だと感じています。

—今後、リクルートでどのようなことをしていきたいですか?

田中:自分が在籍しているリクルートマーケティングパートナーズでは、「スタディサプリ」のほかに「ゼクシィ」「カーセンサー」「リクナビ進学」「Quipper」などさまざまなサービスを展開しています。それらのサービス間をつないでいくようなブランドシナリオ作りに取り組んでみたいですね。実現できるかどうかは別として、社員の誰かが始めようとした試みを、基本的には許容してくれる会社だと思っています。これからはデザイナーがどれだけサービスの上位概念に入り込めるかということも重要になります。ひとつの事業が立ち上がるときに、なるべく早い段階からデザインや情報デザイン、UXの考え方を入れていくことで、より多面的な表現が可能になると思っているので、ヴィジョンを具現化するためのプロトタイピングが迅速にできる環境を前職での経験を活かしながら作っていきたいですね。

—UXデザインチームの人材育成という点では、何か取り組みをされていますか?

田中:まだ取り組み始めたばかりですが、インタビューで課題を引き出す方法や、ユーザー観察法などのコーチングをしています。また、リサーチやアイデア創発の方法論についてもカリキュラムを作り、社内での講義なども始めました。UXデザインというのは少なからず特殊なスキルが必要になる部分もあるので、今後はUXに特化した人材を増やしていきたいと考えています。

仕事のことを考えるとき、常に自分の家族の存在があります。
身近な人たちの笑顔を見て、
やって良かったという実感を得たいのかもしれないですね。

—田中さん自身は、リクルートに入って何か変わったことはありますか?

田中:特に変わった部分というものはなく、自分の方法を貫き通せていますね(笑)。NHNという韓国の会社で働いているときに、自分は日本人だということを強く感じたんです。日本人とは何かということを考えてみると、わびさびの精神から、おもてなしの考え方、色や間に対する意識、さらには仕事の仕方にいたるまで、日本独自だと感じる点がたくさんあります。アグレッシブにどんどん作っていく韓国やアメリカの文化に対して、日本には繊細に物事を積み重ねていく文化があります。また、「かわいい」や「もったいない」という言葉が、いまや海外でも普通に使われているように、日本人はほかの国にはない概念を作り出すことが得意ですよね。でも、それを上手に世界に向けて表現できていないところがあるので、日本人ならではの発想をアグレッシブに伝えていけるような方法を考えたいと思っています。

—田中さんが前職で培ってきたプロトタイピングの手法が、リクルートのヴィジョンと掛け合わされることで、大きな効果が生まれそうですね。

田中:そうですね。これまで働いてきた会社のなかには、少しでもおもしろいと感じたものは、例えバカらしいものでも、とにかくプロトタイピングするという文化があるところもありました。まずは実際に作ってみて、つまらなければやめようという考え方です。一方でリクルートは、目指すべきヴィジョンを明確に定めたうえで、そこに駆け上がっていくための方法を堅実に固めていくところがあります。どちらが良い悪いという問題ではないですが、プロトタイピングの考え方が根付いていないリクルートで、この経験を活かしていけるのではないかと考えています。

—田中さんのこれからのキャリアプランや、人生の夢などについて教えてください。

田中:僕は、単なる「幸せ」ではなく、その先にある「well-being」な状態を作り上げるためにいま何をすればいいかということを考えながら仕事に取り組んでいるのですが、そこには常に自分の家族の存在があります。身近な人たちの笑顔を見て、やって良かったという実感を得たいのかもしれないですね。ユーザーインタビューやワークショップのために学校に足を運んだりするのも、反応を早く見たいからなのかもしれません。人間中心設計(HCD)専門家として、子ども向けワークショップやアイデア創発ファシリテーターなど社外での活動もしているのですが、今後も子どもたちに向けた取り組みは続けていきたいと考えています。

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