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対談から見えるDNAのかけら

「人はハイヒールを履くことで成長する」グローバルビジネスを切り拓く女性責任者対談

谷 紗妙佳

瀬名波 文野

Profile

谷 紗妙佳

Web総合

たに さえか(左)
株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部 スモールビジネスソリューションユニット
リアルマーケティング開発2グループ Air海外チーム
2007年新卒入社。大学では生物情報学を専攻した後、インターンを経験したことがきっかけとなり、リクルートへの入社を決める。「ホットペッパー グルメ」の営業を担当した後、「じゃらんnet」のプロダクトマネジメントや、「ポンパレ」の事業責任者などを務める。2014年10月に、無料POSレジアプリ「Airレジ」の海外展開の責任者に就任した。
※2016年3月時点です。

瀬名波 文野

Web総合

せなは あやの(右)
株式会社リクルートホールディングス
R&D本部 事業開発室 室長
2006年新卒入社。入社後は経営企画室で2年間働いた後、自らの希望でHR(人材領域)に異動し、営業を担当する。在籍した4年間の全四半期連続で売上目標を達成し、さまざまな賞を受賞した後、イギリスに渡り、2つの事業のトップとして220人の現地従業員を率いる。2015年に帰国し、リクルートホールディングスR&D本部事業開発室室長に就任した。
※2016年3月時点です。

まったく異なるバックグラウンドを持ちながら、ほぼ同時期にリクルートに入社し、現在はともにグローバル事業の責任者を務めている瀬名波文野と谷紗妙佳。リクルートに対する強い思い入れを持つことなく入社したというふたりは、その後さまざまな経験を積み重ねながら着実にキャリアを築き上げ、いまやリクルートには欠かせない人材となっている。グローバルビジネスの醍醐味や難しさ、女性として働くことへの意識など、ふたりが向き合ってきた共通の話題を中心に、意見を交わしてもらった。

そこまでして働ける理由というのは何なんだろうと、
そのときは正直理解できませんでした。
おもしろい会社だなと感じると同時に、
冷めた目で見ている自分がいましたね。(谷)

—まずは、おふたりがリクルートに入社されるまでの経緯を教えてください。

瀬名波:私は沖縄出身なんですが、上京して大学に進み、その間に海外にも行ったりしていて、それらのお金を親に出してもらっていたんですよ。だから、少なくとも親に対しては「ちゃんと仕事をしたよ」と胸を張って言えるようなことをして、3年くらいで寿退社したいなと思っていたんです(笑)。完全に世の中を甘く見ていた学生だったんですけど、リクルートが拾ってくれて、腰掛けのつもりで入社しました。入社後は、何もわからないまま経営企画室で仕事をするようになりました。

:私は大阪出身で、東京の大学でバイオインフォマティクス(生物情報学)という新しい分野を学んでいました。たまたま大学の先輩がリクルートの人事にいて、インターンに誘われたことが、リクルートとの最初の出会いでした。当時は外資系の企業で理系の仕事をしたいと考えていたので、最初は自分が働きたい会社ではないかなと思っていたのですが、インターンを経験しておもしろい会社だと感じて。そこから、いろいろなアセットを持っていて、サービス領域も幅広いリクルートで社会人を経験してみるのもいいかなと思うようになり、入社したというのが始まりです。

—バックグラウンドはそれぞれ違うとはいえ、お互いにどうしてもリクルートに入りたかったというわけではなかったのですね。

瀬名波:そうですね。入社前にリクルートの人たちと何人かお会いしましたが、出てくる人がみんな、「社会をこうしたい」「世の中はこうあるべき」と言っていて、最初はその温度の高さに正直引いてしまって(笑)。どこかでそれが嫌いじゃなかったから入社したのだとは思いますが、学生時代はそれだけ熱量が高い大人たちに触れる機会がほとんどなかったので、どう反応すればいいかわからず、ポカンとしていましたね。

:それはわかる気がします(笑)。入社後は「ホットペッパー グルメ」の仕事をするようになったのですが、1か月しないうちに全国から数千人が集まるキックオフイベントがあり、優秀な成績を上げて表彰された人が、感極まって涙ながらにスピーチしているのを見てビックリしました。その場に立っている人たちは、いろいろつらい経験もしてきて、それが認められたということに感動していたのだと思いますが、そこまでして働ける理由というのは何なんだろうと、そのときは正直理解できませんでした。おもしろい会社だなと感じると同時に、冷めた目で見ている自分がいましたね。

通期MVPになったのですが、
一番を獲ったのに全然うれしくなくて。
それから、自分が良い仕事だと思えることしか
したくないと思うようになったんです。(瀬名波)

—おふたりとも温度差を感じていらっしゃったようですが、どこかでスイッチが切り替わるような出来事があったのですか?

:私は最初の配属が大阪で、「ホットペッパー グルメ」の営業をしていたのですが、これまでは自分がご飯を食べに行っていたようなお店に何度も飛び込みで営業するということを繰り返していました。そのなかで、「君は、いまの仕事をこのまま一生懸命に続けていくことが幸せだと思う?」と言われたことがあったんです。それが自分としてはとても悲しくて、そこから仕事の価値というものを真剣に考えるようになりました。

瀬名波:私は最初の2年間、経営企画室で事業開発をしていたのですが、商いの現場も知らない、学生に毛の生えたような人間がする仕事ではないという思いが出てきて。だって、未来の社会はどうなるか、そのなかでリクルートはどう新たな価値を提供していくべきかってことを議論し、意志を持って決めていく仕事だから。私には、いろんなものが足りてないと思ったの。それを素直に上司に伝え、HR(現リクルートキャリア)の営業に配属されました。そこで最初の1年間はすごくがんばって通期MVPになったのですが、一番を獲ったのに実は全然うれしくなかったんですよ。その事実に、我ながら愕然として。それで、表彰スピーチのときに「1年間を振り返ってみても、死ぬときに思い出せるような”良い仕事”をまったくしていない。そんなことに1年間も費やしたことが悔しい」という話をして、もう自分が良い仕事だと思えることしかしたくないと思うようになったんです。

:私は瀬名波さんと違って、仕事に慣れると、素直にサボってしまうところがあるんです(笑)。だから、常に新しいことをしようと心がけていて、自らこまめに部署や仕事の内容を変えてきました。そのなかで、現在IndeedのCEOをしている出木場(久征)さんが作った、領域を横断してネットビジネスを推進する部署に参加したいと自分から手を挙げたんです。それが転機となって、「じゃらんnet」のプロダクトマネジメントなどの仕事がきっかけで経営視点を持つようになり、事業計画や全体の流れをシミュレーションしていくことがおもしろくなっていきました。

瀬名波:営業の仕事を通していろいろな企業を見てきましたが、特に日本の古き良きエスタブリッシュな企業では、会議の場で若手は上司が発言するまで待つということが普通だったりするんですよね。それが良いとか悪いという話ではなく、そうしたカルチャーがあり、だからこそ守られているものもある。一方でリクルートというのは、年齢関係なく何でも任せてしまうし、本当にやりたいと思っている人にしかさせないというところがありますよね。

—でも、おふたりとも最初は、「本当にやりたい人」ではなかったんですよね?

瀬名波:初めはリクルートの熱さに引いていたのに、いつの間にか自分もそうなってるかもしれない。人生ってわからないものですよね。営業し始めのころ、私のことを「リクルートさん」としか呼んでくれなかったある会社の課長さんがいたのですが、その会社にとってするべきことは何かということを一生懸命話していくなかで、あるときから「瀬名波さん」に、そして気がつけば、「俺はこう思うけどお前はどう考える?」と相談してくれる関係性になっていたんです。どうやって社内外のステークホルダーをいっしょに説得し、計画を実行に移すかについて話を重ねていたとき、当事者になれたうれしさを初めて感じて。そこから自分のサイズに合わせたうれしさを積み重ねてきて、気づいたらこうなっていた、という感じです。

:始まりは小さなことからだと思いますが、何かを任せられると人は使命感や達成感を得られるし、その積み重ねが大きい気がします。私たちの仕事はコンシューマービジネスなので、現場と近いからお客さまの反応がよく見えるというのも刺激になっているのかなと。

営業時代のお客さんや、
身の丈以上のミッションを任せてくれた上司、
自分の仕事のために東京に残してきた旦那さんのことを思うと、
ここでおめおめ帰ることはできないなと。(瀬名波)

—おふたりが現在担当している仕事について教えてください

:現在、利用者数が伸びているPOSレジアプリ「Airレジ」の海外展開の責任者をしています。私は主にアメリカを担当しているのですが、先日発表になったApple社との協業をはじめ、現地での事業戦略や新規ビジネスの立ち上げなどに携わっています。

瀬名波:私は、2015年7月にリクルートホールディングスR&D本部の事業開発室長に就任しました。現在は、マイノリティ出資(少数株主として相手先企業に出資すること)後のスタートアップ企業の事業を推進していくということが私たちのミッションです。

—現在はともにグローバルビジネスの責任者という立場ですが、もともと海外で仕事をしたいという思いはあったのですか?

:私は中高時代にインターナショナルスクールに通っていて、周りにも海外で仕事をしている人が結構いたこともあり、いつかはグローバルな仕事をしたいという思いは持っていました。

瀬名波:海外で働くことへの漠然とした憧れはありましたね。小学生みたいな意見で恐縮ですが、海外で働いていると言うと、2割増くらいにかっこよく聞こえるじゃないですか(笑)。でも、実際に海外に行ってみて思うのは、そんなにかっこいいものじゃないぞということですね。

:本当にそうですよね。私は駐在経験はなく、いまも出張ベースでニューヨークなどに行っているのですが、13時間も飛行機に揺られて、時差ボケのまま自分の母国語ではない言葉で現地の人たちとビジネスの交渉をするというのは、精神的にも体力的にも大変なことですよね。そのなかで成果を出していくために常に試行錯誤しているし、かっこいいどころか、ものすごく泥くさい仕事をしているなと思います。お肌も乾燥しますしね(笑)。

瀬名波:そんなことすら気にしなくなりますよね(笑)。いまの仕事をする前に、リクルートが買収したイギリスの企業のディレクターとして、ロンドンに行くことになったんです。そこでは、最終的に220人くらいの現地社員を率いるトップに就任しました。当時はすでに結婚していたので単身赴任という形で3年間働いたのですが、周りに日本人がひとりもいなかったので、特に最初の半年はきつかったですね。現地の人たちからすると、私はリクルートというよくわからない会社から来たお目付け役の姉ちゃんという存在で、完全アウェイのなかで何度も自信をなくしました。でも、お世話になった営業時代のお客さん、身の丈以上のミッションを信じて任せてくれた上司、自分の仕事のために東京に残してきた旦那さんのことを思うと、ここでおめおめ帰ることはできないなと。まだ自分にできることがあるはずだと信じながら、追いつめられたときは「大丈夫、死にやしない」と思って寝る、ということを半年くらい繰り返していた時期もありました。

ハイヒールって歩きづらいじゃないですか。
でも、期待された側は、
ハイヒールを履いているときのように背伸びをしている状態で、
何とか頑張ろうとするものなんだよね。(瀬名波)

―日本での仕事との違いはどのようなところに感じますか?

:国内では、リクルートは多くの人に知ってもらえているし、新たなビジネスを始めるときにも、過去の経験からある程度の勝ちパターンを持っています。でも、海外に行くと、それまでの当たり前が当たり前ではないということがよくわかりますよね。瀬名波さんが現地で経験してきたことを、まさにいま私も肌で感じているという段階です。

瀬名波:私がイギリスに行ったときは、社長をしていた人と何度も喧嘩をしましたが、この事業をいっしょに良くしていきたいということを一生懸命議論していくうちに理解し合えるようになりました。本当に、国籍や人種は関係なく、大切なのは事業、組織、ヒトなんだと思います。アウェイの状況での経営経験から学んだのは、お互いが違うということを受け入れることの大切さでした。綺麗ごとだけじゃなく、ぶつかる瞬間は必ずある。でも一生懸命事業に向き合っていれば、それぞれできることが違う方が、逆に良いと思う。だからこそ、「私と違うみんなといっしょに仕事ができて心強いんだ」と、伝え続けることが大事。リクルートで自然と培われてきた競争に勝つためのノウハウのなかには、海外でも有用なことが多いし。特に、コミュニケーションを諦めないってところとかね。

:海外で自分たちの会社の理念や実績を丁寧に説明すると、「なぜ俺たちはそんな企業のことを知らなかったんだ」と言われることが多いですね。グローバル展開している類似サービスよりも利益をあげている「ホットペッパー グルメ」や「じゃらん」などのサービスを、創業50年以上のひとつの会社が運営しているということは、海外の人たちからしたら大きな驚きなんです。ひとつの事業を継続的に展開し、収益構造を作っていくリクルートのノウハウというのは、世界的に見ても非常に価値のあるものだと思います。

瀬名波:事業がダメになるかもしれないというリスクを背負いながら、若手に大きなポジションを与えてくれるリクルートというのは器が大きい会社だと思うし、とてもありがたいことですよね。こっちも未経験のことが多いので何ができるかわからないけど、期待以上の成果を出したいと思うんです。女性にはよくわかると思いますが、ハイヒールって歩きづらいじゃないですか。男性でも、例えばぐっと背伸びした状態では普通の状態よりも歩きづらいはず。でも、期待された側は、例えばハイヒールを履いているときのように背伸びをしている状態で、それでも何とか頑張ろうとするものなんだよね。そういう風に身の丈以上のミッションを任せて、背伸びの状態を作り出すことで人は大きく成長するということを、本質的にわかっている会社なんだと思います。だからこそ、任された側はハイヒールで知らない道を全速力で走りながら、成果を出すことにこだわる。そんなイメージかな。ね、そんなにカッコよくないでしょ(笑)。

:特に海外でのビジネスというのは、自分が育った国でもない場所で現地の人たちを相手にするものなので、初めから上手くいくわけないんですよね。おごった気持ちや変な憧れを持っていると絶対に上手くいかないし、あくまでも等身大の自分で相手と向き合いながら、何が必要なのかということを考えていくことしかできない。難易度は日本での仕事以上に高いので、それだけの覚悟は必要ですが、飛び込んでみないとわからないところがあるので、相当大変だということさえわかっていればいいのかなと。

自分の個性を活かして、
やりたいことを勝ち取っていける会社なので、
女性ということを特別意識することは
ないのかなと思っています。(谷)

—おふたりともすでにご結婚をされていますが、リクルートという会社は、女性が働く環境としてはいかがですか?

:前提として、男性にも女性にもそれぞれの個性があるので、女性だからと一概には言えないところがあります。ただ、男性と女性は生物学的に違う存在だということもたしかで、女性は出産などのことも考える必要がある。でも、結局は自分がどうしたいかを決めるしかないと思っています。自分がこうしたいということがあれば、リクルートはそれをしっかり聞いてくれる会社なので、その時々で何が自分にとって最も良い選択なのか、どの範囲なら会社は認めてくれるのかということを、話し合っていけばいいかなと。基本的には、自分の個性を活かして、やりたいことを勝ち取っていける会社なので、女性ということを特別意識することはないのかなと思っています。

瀬名波:リクルートグループの一部ではリモートワークを推進していますし、女性が働く環境としても良いと思います。私は、「足るを知る」という言葉が好きなんですが、これは「たくさんのことを求めすぎても幸せになれない」という意味ではないと思うんですね。「足るを知る」というのは、「どういう状態が自分を幸せにするのかを知っている人しか幸せになれない」ということだと捉えています。自分がどうしたいと思うのか、どういう状態が自分にとって素敵なのかということをわかっていれば、それを、努力したり、交渉して勝ち取ることができると思うんです。女性は男性に比べて考えないといけない項目は多いですし、時間的な制約もある。でも、何よりも大切なのは、人生を味わい尽くしているかどうかということだと思っています。

—子育てしながら働くことを応援する「iction!(イクション)プロジェクト」も立ち上がり、ますますやりたいことを実現しやすい環境になっていきそうですね。

:私は、現時点では子どもはできてもできなくても、どちらでもいいと思っています。もし仮に、50、60代でどうしても子どもが欲しくなったら、養子を取るという選択肢もあるかもしれないし、いろんなライフスタイルがあっていいですよね。女の人だから子どもを産むことを最優先に考えないといけないということはないと思うし、自分がそのときにしたいことを実現できるように、いろいろな準備をしておきたいと考えています。

瀬名波:私は、結構家族第一なところがあるかな。3年間も旦那さんを日本に置いていて、何言ってるのという感じですが(笑)。でも、例えばいまでも、沖縄のおじいに何かあったら、日帰りでも沖縄に帰ったりしています。基本的には、仕事か家族かどちらかを選択しないといけないということはないと思っていますが、もし仮にそうなったら、私は家族を取りますね。

:それは私も同じだと思います。でも、そんなことはあまりないと思いますけどね。

瀬名波:私たちはありがたいよね。先駆者が切り開いてきた道の上で、楽をさせていただいています(笑)。ちゃんと恩返しできるように、そして次の世代にバトンを太くして渡せるように、頑張ります!

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